アオイ科フヨウ属

テリハハマボウ

Hibiscus glaber (Matsum. ex Hatt.) Matsum. ex Nakai

テリハハマボウ
東京都小笠原村 2007. 11. 24

テリハハマボウ
東京都小笠原村 2007. 7. 15

テリハハマボウ
東京都小笠原村 2009. 6. 9

小笠原諸島でしか見られない,貴重なハイビスカス。島の固有種の中にはその姿を見ることすら困難になってしまったものが少なくないが, 幸いにして,本種は未だ島のあちこちに健在である。ただし,かつて山深くの湿った場所に林立していたという巨木は,戦前までにほとんど伐り尽くされてしまった。

オオハマボウに よく似ているが,よく観察すると多くの相違点がある。本種の方が花も葉も小さくて丸みの少ない傾向があるが, 環境の違いによる変化が大きい印象があり,時として分かりにくい。識別点として確実なのは,葉の毛の生え方であろう。 オオハマボウでは表面はほとんど無毛,裏面に短い毛が密生するのに対し,テリハハマボウでは両面とも無毛であることが多い。 また,オオハマボウが主に海岸近くで見られるのに対し,テリハハマボウは どちらかというと山の植物だ。そのためか,オオハマボウで見られた種子が水に浮くという性質が本種では失われており, 海流による種子分散ができなくなっている。

テリハハマボウは,かつて島に流れ着いたオオハマボウが内陸に進出するにつれて新たな種として分化することによって生じたと考えられている。 最近の分子系統学的研究においても,この説を支持する結果が示された。ただし,現在小笠原に分布しているオオハマボウの集団が直接の 祖先というわけではないようだ。彼らは,テリハハマボウが分化してから別途侵入してきた系統であるらしい。

【生育地】 山地の中腹や緩やかな尾根筋;乾性低木林にも多い
【生活史】常緑高木〜小高木
【分布】 小笠原諸島(固有)
【花期】 6〜7月を中心にほぼ周年
【参考文献】
Takayama, K. et al. (2005) Origin and diversification of Hibiscus glaber, species endemic to the oceanic Bonin Islands, revealed by chloroplast DNA polymorphism. Molecular Ecology 14: 1059-1071.