クマツヅラ科ムラサキシキブ属

オオバシマムラサキ

Callicarpa subpubescens Hook. & Arn.

オオバシマムラサキ
東京都小笠原村 2007. 7. 10

小笠原諸島には,ムラサキシキブの仲間の植物が3種類知られている。吹きさらしの乾いた岩場などに生育するウラジロコムラサキ, 内陸部の湿った林内に生育するシマムラサキ,そして明るい林の縁などを好むオオバシマムラサキだ。

残存個体数の少ない危険な状況に置かれている前2者とは対照的に,オオバシマムラサキは島に分布する固有樹種の中では 観察しやすい方だ。道端のヤブや林内のギャップなどに雑然と生えている様子は,ムラサキシキブ などとあまり変わらない。しかし,彼らとの間には, 花の性表現において決定的な違いがある。本州のムラサキシキブ属の植物では,すべての個体が 雌としても雄としても機能するが,小笠原に固有の3種では,雌株と雄株の区別が存在するのだ。

オオバシマムラサキの雌株の花は,一見するとムラサキシキブと同じ両性花のようだが,花粉は不稔であり, 花を訪れた昆虫へのご褒美としての役割しかない。一方,雄株も両性花に見える花を咲かせるが, 雌しべの発育が悪く,柱頭に花粉が着いても結実に至らない。株によっては,完全に退化して雄しべのみに なっていることもあるという。雌雄異株性の形質が,今まさに生まれつつあるところなのだろう。

【生育地】 林縁,明るい林内など
【生活史】 常緑低木〜小高木
【分布】 小笠原諸島(各島)
【花期】 主として5〜6月
【備考】 ムラサキシキブ同様,花は通常は淡紫色。しかし,この個体は白い花をつけていた。 雌株に特有の長い柱頭が,写真でも確認できる。