ヤシ科ノヤシ属

ノヤシ

Clinostigma savoryana (Rehd. et Wils.) Moore et Fasberg

ノヤシ
東京都小笠原村 母島 2008. 1. 18

島崎藤村作曲の「椰子の実」で歌われているように, ヤシ科の植物は南の島の景観を特徴づける樹木の代表といえる存在である。 その分布の中心は熱帯地方であり,我が国に自生するのはわずかに5種類ほどに限られている。 一般的なヤシのイメージに近い種,すなわち,高い幹の先端に涼しげな羽状複葉の葉をつけるもの となるとさらに少ない。実質,八重山諸島のヤエヤマヤシと小笠原諸島のノヤシの2種だけである。

小笠原ではかつてあちこちの島でノヤシのまとまった群落が見られたそうだが, 新芽が美味なことから戦時中に食料として盛んに利用されたため,個体数が激減してしまった。 現在ではそれなりに回復してきてはいるようだが,向島をのぞき,生育密度はあまり高くない。 果実の実りは悪くはないが,移入されたクマネズミによって未熟なうちにほとんど食べられてしまうため, 実生として定着できるのはごくわずかであるようだ。

【生育地】 山地の林内 
【生活史】 常緑高木 
【分布】 小笠原諸島(父島,兄島,弟島,母島,向島,姉島); 日本固有 
【花期】 主に6〜7月
【備考】 母島では北進線沿いに植えられている個体が観察しやすいが,これらはすべて向島産であるらしい。