ジンチョウゲ科アオガンピ属

ムニンアオガンピ

Wikstroemia pseudoretusa Koidz.

ムニンアオガンピ;雄株?
東京都小笠原村 2007. 11. 22

ムニンアオガンピ;雌株?
東京都小笠原村 2007. 11. 19

南西諸島などに分布するアオガンピに近縁な種類で,小笠原特産。 島でのかつての呼び名はサクラコウゾ。かつては和紙の材料として使われてきた。

アオガンピとムニンアオガンピの見た目はとてもよく似ているが,両者の花の性表現のパターンはまったく異なる。 アオガンピには性の区別はなく,どの株も雄しべと雌しべの両方をもつ花,すなわち両性花をつける。一方, ムニンアオガンピでは2つの性が存在し,雌花のみをつける株と雄花のみをつける株がある。小笠原諸島に固有の植物の中には, 本種のように,島での進化の過程で雌雄の違いが生じたとみられる事例が多く知られている。

性が分かれた理由のひとつして考えられるのは, 花を訪れる昆虫の顔ぶれの貧弱さである。小笠原のような海洋島,すなわち過去に大陸などと一度も陸続きになったことのない島では, 飛翔力が強い有効な送粉者が少ないため,両性花を咲かせた場合, 自分自身との交配(隣花受粉)が増えて,健全な子孫が残せなくなる可能性がある。これを防ぐため, 他の株から花粉が運ばれない限り種子ができないようにした,というわけである。

ただ,こうした戦略は良いことづくめではない。あまりにも昆虫が来なかった場合,種子を作ることそのものが不可能になるからだ。 グリーンアノールの野生化によって在来の昆虫相が壊滅的な打撃を受けた父島・母島では,今後何らかの悪影響が出てくることが 懸念される。

【生育地】 海岸近くの岩場,乾性低木林の林縁などの明るく乾燥した立地
【生活史】 常緑低木
【分布】 小笠原諸島(固有)
【花期】 主に4月〜5月と10月〜11月
【備考】 葉の形態の変化が激しく,吹きさらしに近い場所に生えた個体は小さな丸っこい葉をつけるが, 林内の株の葉は細長い楕円形であり,一見すると同種とは思えない。