シソ科アキギリ属

ヒメタムラソウ

Salvia pygmaea Matsum.


沖縄県西表島 2005. 3. 14

山地の渓流沿いという環境は,植物にとってはかなり苛酷だ。適度な水分条件が 維持されやすいという利点はあるものの,ひとたび大雨が降れば猛烈な水流の 洗礼を受けることになる。漫然と生育していたのでは,あっという間に 押し流されてしまうだろう。そのため,こういった場所に生育する植物は あの手この手で対策を講じてきた。

そのひとつが,植物体が水流から受ける抵抗を小さくしようとする戦略である。 リュウキュウツワブキなどは葉の幅を狭くすることでそれを実現しているが,この ヒメタムラソウは葉を細かい小葉に分割することで対処しているようだ。実際、葉の切れ込み方は 日本産のアキギリ属の中ではずば抜けて細かい。また,葉の着き方にも工夫が見られる。 葉は全て根生葉であり,地表に伏したロゼットを作る。そのため,花期以外は植物体の 背丈はとても低くなる。茎の途中にも葉を着けて立ち上がる同属の他種とは 対照的である。

【生育地】 山地の渓流沿い
【生活史】 多年草
【分布】 奄美,徳之島,沖縄本島,久米
石垣,西表 −日本固有。
【花期】 3月
【備考】 これほど撮影が難しい 植物も珍しい。花序に焦点を合わせれば葉がぼやけ,葉に合わせれば 花がぼける。植物体の造作が細かいせいで距離をとると細部が 潰れやすいし,薄暗い沢筋では白い花は露出オーバーになりがち。 さんざん粘った甲斐なく,納得のいく写真は撮れなかった。


根生葉
根生葉は頭大二回羽状複生  沖縄県西表島 2005. 3. 14