ケシ科キケマン属

ヤマエンゴサク

Corydalis lineariloba Siebold et Zucc.

ヤマエンゴサク
東京都八王子市 2011. 4. 10

ヤマエンゴサク
東京都八王子市 2011. 4. 10

関東の里山を彩るキケマンの仲間は,低地から山奥に向けて花色が赤い種から青い種に移り変わっているように思う。最も人里近くには,紅紫色の花を咲かせるムラサキケマン。郊外に出て山裾に差し掛かると,淡紅色から藤色,淡青紫色の花を咲かせるジロボウエンゴサクが多くなる。そして山に入ると,主にこのヤマエンゴサクが見られるようになる。北海道のエゾエンゴサクのような派手さはないが,その花には,少し霞のかかった春の空にも似た,心安らぐ雰囲気がある。

それにしてもおかしな名前である。初めて聞いたら,大抵の人は「え? どういう意味?」と問い返してしまうのではないだろうか。鎮痛作用のある生薬である「延胡索」に近縁なのでその名を借りたというあまり面白くない由来ではあるものの,花が目を引くこともあって,観察会などで説明するネタが少ないときには,実に貴重な助っ人になってくれる。盗蜜をしているマルハナバチやそのおこぼれに預かっている虫たちがいたらなお良いのだが,なかなかそういった現場には出くわせない。

【生育地】 低山の明るい林内や林縁
【生活史型・生育型】 多年草
【分布】 本州,四国,九州; 東アジア
【花期】 4〜5月
【備考】 エゾエンゴサク,ジロボウエンゴサクでは花序の苞葉が全縁またはほとんど切れ込まないが,本種では苞葉に細かな切れ込みが入る。