キキョウ科タニギキョウ属

タニギキョウ

Peracarpa carnosa (Wall.) Hook.f. et Thomson

タニギキョウ
岩手県一関市 2010. 5. 18

キキョウ科植物の中ではかなりの変わり者である。花のつくりそのものは典型的なキキョウ科植物のそれであり,申し訳程度ながら紫色の筋も入っている。しかし,そのサイズはとても小さい。草丈も低く,細い根茎を伸ばして這い回る。暗い湿った林床に群生している様子は,キキョウというよりはハコベの仲間に近い。

もっとも,最初に記載されたときの印象は違ったようだ。我が国では日本の個体群をヒマラヤに分布する母種とは異なる変種 var. circaeoides として扱う見解が主流だが,この変種名はCircaea,すなわちアカバナ科のミズタマソウ属に似た,という意味である。なるほど,確かに花をつけていない状態の本種のシュートは,春先に葉を展開しはじめたミズタマソウやミヤマタニタデを彷彿させなくもない。少なくとも,生育環境は似通っている。

標本採集の際に紛らわしかったなどの理由で印象深かったのかもしれないが,さすがに目のつけどころがマニアックだと思う。

【生育地】 山地の林下; 谷間などやや湿った場所を好む
【生活史型・生活型】 多年草
【分布】 北海道,本州,四国,九州; 朝鮮(済州島),中国,南千島,樺太,カムチャツカ
【花期】 6〜8月
【備考】 ここでは種内分類群を分けない見解[3]にしたがった