ゴマノハグサ科キタミソウ属

キタミソウ Limosella aquatica
茨城県 2003. 11. 23

キタミソウ

Limosella aquatica Linn.

数年前の真冬のある日,初めて この奇妙な植物の自生地を訪れた。しかし,いくら探してもそれらしきものが見つからない。 泥深い岸辺には,半ば枯れかけたコケがみすぼらしく張り付いているばかり。ところが, よく見るとそのコケには小さな白い花が咲いていた。そう,コケに見えたのは, キタミソウが冬の乾燥に耐え忍んでいる姿そのものだったのだ。

植物体の高さはせいぜい3, 4cm。指摘されない限り,普通の人はその存在に 気付きさえしないだろう。このせいもあるのだろう,国内からの報告は今のところ数箇所に 限られる。しかし,世界的にみると分布域は広く,北半球の亜寒帯では広く見られる。

水位が高い条件では種子の状態で休眠し,水位が低下して一時的な裸地が生じると, 速やかに発芽して繁殖する...これが,キタミソウの基本的な戦略らしい。 そのため,その生き様は人間の水利用のあり方と深く関連している。

例えば,上に書いた自生地。ここは普段は水没しているが,冬季のみ堰の落水に 伴って地表が露出し,キタミソウが繁茂する。季節柄,昆虫の訪花は およそ期待出来ないが,この植物は自分自身の花粉でも結実する。従って,種子生産に 関してはほとんど問題はないようだ。随分と慎ましい生き方だが,もともと北方系の 植物ゆえ,その方が性に合っているのかもしれない。

キタミソウ Limosella aquatica
【生育地】泥湿地
【生活史】一年草
【分布】北海道,本州,九州に稀
【花期】 生育地によって様々
【備考】絶滅危惧TA類



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