キク科シオン属

カワラノギク

Aster kantoensis Kitam.

カワラノギク(保全事業における播種個体により生産された種子に由来する株)
栃木県 2007. 10. 30

急勾配かつ短距離の日本の河川の中流域には,激しい出水によって山から持ち出された握りこぶし大の丸い石が 累々と転がっていることが多い。このような場所で 植物が生き抜いていくためには,乾燥や直射日光に対する強い抵抗力に加え, 大雨の度に自生地が破壊されることへの対抗手段が必要となる。 カワラノギクは,そういった死地に活を求めることを選んだ, 河原固有植物という名の勇者たちのひとりである。

彼らの葉は,他の野菊たちと比較すると明らかに細長いが,これには 増水の際に水の抵抗を減らすこと,渇水時に余計な蒸散を抑えることなどの理由がありそうだ。。 また,若い株が作るロゼットはタンポポなどの路傍雑草のそれのような 平坦なものではなく,葉を立体的に展開させた三次元的なものとなっているが,これは強い照り返しへの対策だと思われる。 1年〜数年の生長期間ののち1回だけ開花して枯れてしまうという独特な生活史は, 攪乱によって生育適地が頻繁に移り変わることへの適応なのだろう。

もっとも,河川改修の進展により,かつてのように川が大暴れすることは少なくなった。 彼らにとっての現在の最大の脅威は,シナダレスズメガヤなどの外来植物の侵入である。

【生育地】 河川中流域の礫質河原
【生活史】 1年草〜短命の多年草(1回開花すると枯死)
【分布】 本州(関東,東海)
【花期】 10月
【備考】 他のシオン属植物と同じく果実には明らかな冠毛があるが, 天竜川の個体群はその長さのバラツキが大きく,研究者によってどう扱うか意見が分かれているようだ。 ロシアや中国東北部などに分布し,生態・形態ともにカワラノギクに酷似した特徴をもつというHeteropappus meyendorffii との 関係も気になるところ。


舌状花の色調は実際はもっと紫がかっている
栃木県 2006. 10. 15